キャッシュレス決済を導入すると、売上が発生するたびに決済手数料が差し引かれます。現金決済にはない費用なので、店舗経営者が「手数料が高い」と感じるのは当然です。
本記事では、日本と海外の決済手数料、手数料が発生する理由、利益への影響、負担を抑える方法を解説します。主要なキャッシュレス決済サービスも比較するため、現在の契約を継続するか、他社へ乗り換えるかを判断できます。
キャッシュレス決済の手数料は高い?相場と判断基準
日本と海外のキャッシュレス決済手数料を比較
海外と比べると、日本のキャッシュレス決済手数料の位置づけが分かります。ただし、国ごとに料金体系や規制が異なるため、数字だけを並べて判断することはできません。
Squareが各国で公開している対面カード決済の料金を比べると、次の違いがあります。
| 国または地域 | 対面カード決済の代表的な手数料 | 料金体系の特徴 |
| 日本 | 2.50%から | 年間決済額や決済方法によって変わる |
| 英国 | 1.75% | 英国発行カードは決済額に対する手数料のみ |
| 米国 | 2.60%+1件15セント | 決済額に対する手数料と固定額の両方がかかる |
日本のSquareでは、年間キャッシュレス決済額が3,000万円未満の事業者について、主要カードの対面決済が2.50%からです。英国では対面カード決済が1.75%、米国では基本プランの対面決済に2.60%と1件15セントがかかります。
この比較は各国全体の平均ではなく、同じ事業者が公開している料金です。それでも、英国では日本より低い決済手数料が設定されていることが分かります。
一方、米国では決済1件ごとに固定額が加わります。少額決済が多い店舗では固定額の影響が大きくなり、実質的な負担割合が日本を上回ることもあります。
海外の手数料は参考になりますが、日本の店舗が契約を見直すときは、国内で利用できるサービス同士を比較してください。
決済手段別のキャッシュレス決済手数料
日本国内の決済手数料は、決済手段、ブランド、契約プランによって変わりまが、決済額の1.98%から3.25%程度が中心です。
経済産業省によると、2020年以降のキャッシュレス推進施策を背景に、中小事業者向けに1.98%から2%台のプランが提供されるようになり、従来の3.24%前後から手数料が下がっています。決済事業者間の競争によって、クレジットカードの決済手数料が0.7から1.3ポイント程度下がった事例もあります。
| 決済手段 | 一般的な決済手数料 | 高いと判断する目安 |
| クレジットカード | 1.98%から3.24%程度 | 低手数料プランを利用できるのに3.24%以上 |
| 電子マネー | 1.98%から3.24%程度 | 利用額の大きい電子マネーも一律3.24%前後 |
| QRコード決済 | 0.99%から3.24%程度 | 利用額の大きいブランドを3.24%前後で契約 |
日本のキャッシュレス決済手数料が海外より高いといわれる理由
日本のキャッシュレス決済手数料が海外より高いといわれる背景には、手数料に関する規制と、店舗が負担する範囲の違いがあります。
日本がすべての国より高いわけではありません。ただし、欧州や米国の一部では、日本より店舗負担を抑えられる仕組みが採用されています。
欧州のようなインターチェンジフィーの法的上限がない
インターチェンジフィーとは、カード決済時にカード発行会社へ支払われる手数料で、店舗の決済手数料に含まれます。
EUでは、この費用に上限があり、デビットカードは0.2%、クレジットカードは0.3%までと定められています。
日本でもインターチェンジフィーの標準的な金額は公開されており、クレジットカードではカード種別や業種によって異なるものの、一般的に1%台から2%台前半程度が目安とされています。しかし、EUのように上限を一律で定める法律はありません。
日本では法律による制限ではなく、手数料の公開と決済事業者間の競争によって、店舗負担の引き下げを進めています。
日本ではカード手数料を利用者へ上乗せできない
日本では、カード会社の加盟店規約により、カードを利用した顧客だけに決済手数料を上乗せする運用が原則として禁止されています。
JCBも、加盟店との契約で手数料の上乗せを禁止し、確認した場合は店舗へ是正指導を行うと明記しています。
一方、アメリカでは州ごとに規制が異なりますが、一部の州では一定の条件を満たすことでクレジットカード利用者に対して決済手数料を上乗せすることが認められています。例えば、事前の通知や店頭での明示、上乗せ額の上限設定などが求められます。
| 比較項目 | 日本 | 手数料の上乗せが認められる国や地域 |
| カード利用者への追加料金 | 加盟店規約で原則禁止 | 法令やカード会社の条件内で可能 |
| 主な負担者 | 店舗 | 店舗またはカード利用者 |
| 店舗への影響 | 決済手数料を経費として負担 | 一部をカード利用者へ転嫁できる |
日本でも、決済手数料を見込んで商品全体の価格を設定することはできます。しかし、カードを利用する顧客だけに追加料金を請求する運用はできません。
この違いによって、日本の店舗は決済手数料を自社の経費として負担する割合が大きくなります。
キャッシュレス決済で手数料がかかる理由
キャッシュレス決済は、店舗と顧客の間だけで完結する取引ではありません。
店舗と契約する決済会社、顧客のカードを発行した会社、VisaやMastercardなどの国際ブランドがそれぞれ決済処理に関わっています。
店舗が支払う決済手数料の基本的な内訳は、次のように表せます。
店舗が支払う決済手数料=インターチェンジフィー+国際ブランドへの利用料+決済会社の処理費用
それぞれの費用には次の役割があります。
| 主な費用 | 支払先または用途 | 費用に含まれる業務 |
| インターチェンジフィー | 顧客のカードを発行した会社 | カード発行、会員管理、不正利用補償 |
| 国際ブランドへの利用料 | VisaやMastercardなど | 決済ネットワークの提供と管理 |
| 決済会社の処理費用 | 店舗と契約する決済会社 | 決済処理、売上管理、入金、問い合わせ対応 |
| セキュリティ関連費用 | 決済に関わる各社 | 本人認証、不正利用対策、カード情報の保護 |
| システム運営費 | 決済に関わる各社 | 通信、システム保守、障害対応 |
決済手数料の全額が決済会社の利益になるわけではありません。決済会社は受け取った手数料から、カード発行会社と国際ブランドへ費用を支払います。
さらに、決済の承認、売上データの管理、店舗口座への入金、不正利用の監視、問い合わせ対応にも費用がかかります。
Squareも、カード決済の手数料にはカード発行会社とカードネットワークへ支払う費用が含まれると説明しています。
セキュリティ対策にも費用が掛かります。Squareでは対面決済が2.50%からであるのに対し、オンライン決済は3.60%、カード番号を手入力する決済は3.75%です。これはオンライン決済やカード番号の手入力は、対面決済よりも不正利用の危険が高くなるためです。
キャッシュレス決済手数料が利益に与える影響
決済手数料は売上から差し引かれるため、店舗の利益を直接減らします。
決済手数料の差が0.5ポイントでも、キャッシュレス決済の売上が増えるほど負担差は大きくなります。
| 月間決済額 | 1.98%の場合 | 2.50%の場合 | 3.24%の場合 |
| 100万円 | 1万9,800円 | 2万5,000円 | 3万2,400円 |
| 300万円 | 5万9,400円 | 7万5,000円 | 9万7,200円 |
| 500万円 | 9万9,000円 | 12万5,000円 | 16万2,000円 |
月間決済額が300万円の場合、1.98%では年間71万2,800円、3.24%では年間116万6,400円です。
年間の差額は45万3,600円になります。
決済手数料が0.5ポイント異なる場合の年間差額は次のとおりです。
| 月間決済額 | 月間の差額 | 年間の差額 |
| 100万円 | 5,000円 | 6万円 |
| 300万円 | 1万5,000円 | 18万円 |
| 500万円 | 2万5,000円 | 30万円 |
粗利益率が20%の店舗では、18万円の手数料を補うために90万円の追加売上が必要です。
手数料の見直しは単なる経費削減ではありません。売上を増やさずに利益を残す施策です。
キャッシュレス決済の手数料を抑える方法
キャッシュレス決済の手数料は、次の順番で見直してください。
| 優先順位 | 方法 | 確認する内容 |
| 1 | 低手数料プランへ変更する | 現在のサービス内で変更できるか |
| 2 | 決済会社へ契約条件を相談する | 決済額に応じた個別条件があるか |
| 3 | QRコード決済の直接契約を比較する | 削減額が管理負担を上回るか |
| 4 | 他社へ乗り換える | 年間の総負担が下がるか |
最初から他社へ乗り換える必要はありません。現在のサービス内で手数料を下げられれば、端末交換やスタッフへの再説明をせずに負担を削減できます。
低手数料プランや優遇プランへ変更する
中小事業者向けの低手数料プランでは、主要カードの決済手数料が1%台から2%台に設定されています。
STORES 決済のスタンダードプランでは、VisaとMastercardが1.98%、JCBなどが2.38%です。stera packとPAYGATEも、条件を満たす中小事業者に1.98%からの決済手数料を提供しています。
ただし、低手数料プランには条件があります。
- 年間の決済額が所定の金額以下
- 中小企業の定義に該当
- 対象外業種に該当しない
- 上場企業のグループ会社ではない
- 新規契約などの申込条件を満たす
PAYGATEでは、直近1年間のVisaとMastercardの合計売上が2,500万円以内であることなどが条件です。
低手数料プランは自動で適用されるとは限りません。現在利用しているサービスへ確認し、変更手続きが必要ならすぐに申し込んでください。
決済会社へ契約条件を相談する
年間決済額が大きい店舗や、複数店舗を運営する事業者は、決済会社へ個別条件を相談してください。
相談前に用意する情報は次の5つです。
- 過去12カ月のキャッシュレス決済額
- カードブランド別の売上
- 現在の決済手数料と月額費用
- 他社の見積もり
- 今後の決済額の見込み
Squareは年間取引額が2,500万円以上の事業者に対して、個別の料金プランを案内しています。
決済手数料だけでなく、端末代、振込手数料、追加端末の費用も相談してください。
QRコード決済は直接契約も比較する
複数のQRコード決済をまとめて契約すると、申込、端末、売上管理を一本化できます。
一方、利用額の大きいQRコード決済を直接契約すると、決済手数料を抑えられる場合があります。
| 比較項目 | 直接契約 | 一括契約 |
| 決済手数料 | ブランドごとに異なる | 複数ブランドで共通の場合が多い |
| 申込手続き | ブランドごとに必要 | 一度の申込でまとめられる |
| 売上管理 | 管理画面が分かれる | 一つの画面で確認できる |
| 入金確認 | 入金日が分かれる | まとめて確認できる |
| 店舗運用 | 契約管理が増える | 管理負担を抑えられる |
直接契約による年間削減額と、経理や売上確認にかかる時間を比べてください。削減額が小さい場合は、契約を分ける必要はありません。
手数料が低い決済サービスへ乗り換える
現在のサービスで決済手数料を下げられない場合は、他社へ乗り換えてください。
年間の削減額は、次の式で計算できます。
年間削減額=年間決済額×決済手数料の差−新サービスの年間固定費−乗り換え費用
月間決済額300万円の店舗が3.24%から1.98%へ変更すると、年間の決済手数料は45万3,600円減ります。
新サービスの月額費用が3,300円なら、年間固定費3万9,600円を差し引いても、年間約41万円の削減です。
初期費用の安さではなく、1年から3年間の総コストで判断してください。
手数料が低いキャッシュレス決済サービスを比較
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キャッシュレス決済サービスを乗り換える際の確認事項
キャッシュレス決済サービスは、決済手数料だけで選んではいけません。
乗り換え前に、次の5項目を確認してください。
| 確認項目 | 確認する内容 |
| 解約費用 | 解約金、端末残債、返却費用 |
| 入金条件 | 振込手数料、締め日、入金回数 |
| 対応ブランド | 現在利用されている決済手段 |
| 切り替え日程 | 審査期間、端末到着、利用開始日 |
| システム連携 | POSレジ、会計ソフト、予約管理 |
解約金と端末の残債を確認する
現在の契約に最低利用期間がある場合、途中解約で違約金が発生することがあります。
端末を分割購入している場合は、解約後も残債の支払いが続きます。無償で貸与された端末は返却が必要です。
年間削減額が解約費用を上回るなら、契約期間中でも乗り換える価値があります。契約終了までの期間が短い場合は、更新時期に合わせて変更してください。
入金手数料と入金日を確認する
振込手数料が1回220円でも、月6回なら年間1万5,840円です。決済手数料だけを比較すると、この費用を見落とします。
仕入れ、家賃、給与の支払いが多い店舗では、売上が口座へ入るまでの日数も重要です。
決済手数料の差より、入金の早さを優先する場合もあります。
必要な決済ブランドへの対応を確認する
対応ブランド数が多ければよいわけではありません。
現在の売上データから、利用額の大きいクレジットカード、電子マネー、QRコード決済を確認してください。
VisaとMastercardの利用が中心なら、この2ブランドの決済手数料を優先します。JCBの利用が多い店舗では、VisaとMastercardだけが安いプランを選んでも削減効果は限定的です。
審査期間と切り替え日程を確認する
新しいサービスでは、決済ブランドごとに加盟店審査が行われます。すべての決済手段を同じ日に開始できるとは限りません。
stera packでは、申込から利用開始まで約2週間から2カ月かかります。QRコード決済は審査が長期化し、3カ月以上かかる場合もあります。
旧サービスは、新しい端末で主要ブランドを利用できることを確認してから解約してください。
POSレジや会計ソフトとの連携を確認する
決済端末とPOSレジを連携すると、会計金額が自動で反映されます。
連携できない場合は金額を手入力するため、入力ミスと締め作業が増えます。会計ソフトへ売上や入金データを自動で送れるかも確認してください。
最終的に比較するべきなのは、決済手数料ではなく店舗運営全体の総コストです。
決済手数料、月額費用、端末代、振込手数料、入金日、対応ブランド、システム連携を確認し、年間負担が最も小さいサービスを選んでください。
